卒業制作「ときわの話(仮)」前譚

 思い出すことよりも必要なことがあるんだよ。

 わたしたちは今を生きているのだから、
 思い出すのなんて時々でいい。
 何かあった時、それが財産になるくらいのもので。
 過去はマニュアルに過ぎない。
 もしくはストック。
 確かに豊かだけどね。

 思い出すより大切なこと。

 それは、混ざり合うこと。

 過去の一点と今の一点が、不思議な関係でつながること。

 過去としての森。
 そこに置き去りにされた名前。
 でも、ここにボールはある。
 それできっと十分だ。

 

 4月のわたしは、わたしに「ほんとう」を思い出して欲しがっていた。
 8月のわたしは、わたしに神話を思い出して欲しがっていた。
 そして今のわたしは、神話は感じとるものだと知っている。