あんたたちはあたしにないものを持ってるからそんなことができるんだ、ずるい、って言うことは、社会問題の指摘とかそういう文脈では大事なんだけど個人の人生観としてはあんまり言いたくないかな。自分から力を奪ってしまいそうで。
そんなに言いたくなるってことは、あたしの中にもきっと本当はあるんだよ、「体力」。
そう、とにかくわたしはすぐ倒れてしまう自分が嫌い。すぐ疲れてしまう自分がすごく嫌い。
それは人一倍刺激を受け取るからだし、物事を深く考えてしまうから(そして考えないようにすることができない。気持ち悪すぎるし倫理的に良くないと思う)なんだよ。
まあそうですね、正直自分の方が正しいと思ってるから、物事を考えすぎないタイプの人が生きやすく立派になりやすい環境なのにものすごく立腹しています。たぶん偏った考え方なんだろうな。つまりコンプレックスを持ってるってこと。この気質に。
「わたしだって体力さえあれば」とか、「物事を深く考えるタイプじゃなければ」みたいなことを考えてしまう。考えたってそれになれるわけじゃないのに。
いや、「考えたってそれになれるわけじゃないのに」って、やめよ。それって賢いフリした諦めだから。やめやめ。
そうじゃなくて、それだけわたしは「力」が欲しいんだ。
何でもいい。体力でも、経済力でも、人気力でも。そういうものって体力がなきゃ、物事を考えすぎない性質じゃなきゃ手に入らないって思ってしまう。
これも、思い込み、なのかなぁ。
どうしてわたしはこうなんだろ。なんでこんなにうまく生きられないんだろ。楽しく生きたいだけなのに。自分を殺したくないだけなのに。
わたしは一体何者なんだろう。
思えばいっつもこんなこと考えてたな。なんでこんなにうまくいかないんだろうって。学校と名のつく場所に通うようになってからずっと。
「早く結果を出さなきゃ」みたいな気持ちがある。だって「突き抜ける」ことしかわたしにはできないから。人に合わせられないもん。でも、正攻法ができる人の方が、結局突き抜けることだって上手なんだよ。はーなんでーーー!!!!! ずるいずるいずるいずるい!!!!!!!
わたしは、ほんとうは何もできないのかもしれない。
でも、ほんとうはそっちの方が良いのかもしれない。
何もなくても愛される、何もなくても生きていける、の方が。
わたし、自分は「ものを作ることしかできない」って思ってたけど、それを握りしめることもやめてもいいのかもしれない。
いや、ものを作るのはめっちゃ好きだから、一生やめないよ。とくに歌を作ることと歌うこと。
でも、なんていうんだろう、「わたしにはこれしかない!」っていうのはさ、やめた方がいいよね絶対。重いもん。動きづらくなる。
何もなくてもともとだから、「何かできる」になろうとしなくて良いのかもしれない。
何もない状態をさらけ出して生き続ければいいのかもしれない。
わたしね、最近、わたしのテーマは「いのち」なのかもしれない、って思うの。
わたしのテーマ……わたしの活動のテーマ、なのかな。
いのちであることだけでパワーだし、余計なものはいらない、みたいな気持ちが常にあって。
だからシンプルなものが好きなんだよね、たぶん。
ただのお花とか、ただのりんごとか、ただの鋏とか、ただのタオルとか、ただの水とか、なんだろ、その存在自体の純粋さっていうの? それに惹かれるところがあって。はっとさせられるというか。
だからわたしも、そこに帰っていくのかもしれない。
まるはだかのわたし。
ただわたしがここにいるだけ。
そこに帰っていく。
わたしには何もない。
何もないよ、あんたたちが期待するようなものはね。
だから何かをできるとも言わない。
だって期待に応えるのってダルいもん。
わたしは、何もできない。
でもどうやら、そのスタンスでいた方が、「あなたの世界観ですね」「あなたの個性を感じます」って言われやすくなるらしい。
わたしは何もできない。
何もできなくて、もともとだ。
それでも生きていける。
だって命がここにあるから。