傷つかない人、傷ついたとしても残らない人、どんなことでも忘れようと思えばすぐに忘れてしまえる(あるいはそうでなくても忘れてしまう)人、感情や言葉や状況の機微が「分からない」人っているものですよね。
ほんとうはその人だって内側に色んな事情や複雑な様相があることは間違いないとしても、そういう人をわたしは「現象のような人」と心の中で呼んでいます。
今しかなくて、その「今」が過去や未来に繋がりすぎない。そんな、わたしからしたらある意味羨ましい能力を持っているんだろうな、と。
わたしは何でもかんでもすぐに、今起きたことから過去を参照して悲しくなって、さらにそこから未来を憂いてしまうから。
また同じことが起きないようにはどうしたらいいのか、どうしたらうまくいくのか考えてしまう。
……意味がないのに。
「同じ失敗を二度としないように」なんてできるわけがないって気がついちゃったんですよ。
同じ失敗を二度としないようにしようとしたら、わたしの頭の中はたくさんの留意事項でいっぱいになってしまいました。
そもそも一歩、自分しかいない部屋の外に出ただけで、わたしが立ち向かわなければならない問題も刺激もめちゃくちゃに細かく無数のものたちが押し寄せてくるのに、そんなにたくさんの、いままで蓄積されてきた留意事項を守って毎日生きていくなんて負荷がかかりすぎるんですよ。
だからパターン化して(でもそのパターンも生まれ持った素質のおかげで細かくできてるので、機械的で大雑把なものではない……と自分では思ってます)、オートで現実に対応できるように身体に学習させるんですけれど。
そうして必殺「空気を読む」−−あるいは「顔色伺い」−−必殺技なのにパッシブスキル−−が出来上がりです。
これを、誰かといるときのわたしは常に発動しているんです。めっちゃMP食うんですよ。
でも好きな友達とか相手だと、自分の言いたいことを言いつつ、相手に優しくする(これは趣味です、一緒にいられて嬉しい! って気持ちが溢れてやってるので自分がやりたくてやってるやつです)が思うようにできて楽しいので、そういういい点はあるんですけど、だからずっと好きな友達とだけ関わってたいんですけど、それはかえってMP回復かもしれないんですけど。
「普通に生きる」ために「空気を読む」を発動していると、すごい早さで消耗してくんです。
わたしは自分がこういう体質なんだと理解して、わたしを守んなきゃいけないなと思ってるんです。
そうでもしないと、「わたしばっかりしんどい」っていうはたから聞いたらめっちゃ理不尽な恨みを溜めてしまうから、そうなるくらいなら。
でも困ったことに、「現象のような人」の動きは予測ができないし、対処ができないんです。
顔色伺ったって無駄になるんです。
先回りして危険を回避したり、いい感じのものを手に入れたりするスキルが「空気読む」なのに、それができないと先回り損です。
そこでもまた、はたから聞いたら理不尽な怒りが湧いてしまうわけで。
「わたしこんなに先回りしたのに、労力無駄にしやがって!」っていう。
いや、わたしが勝手に先回りを選んだんだよね、相手にコントロールできないことなんだからそれでキレられたら相手にしてみたら理不尽じゃん、っていう。
でも先回りしないってどうしたらいいんでしょう。
昔からそればっかりやってきたので、わからないんです。
誰よりも早く大人の意図を読み取ろうって頑張ってきたんです。
そうしたら怒られなくて済むし、見捨てられなくて済むし、いじめられなくて済むから。
「現象みたいな人」は、わたしがスキル「先回りしない」を覚えるために配置されたボスなんだと思うんですけど、突破方法がわかんないです。
……この記事を書きながら、また自分で頭から読み返しながら考えたけれど、わたしのスキル「空気を読む」って、多分「媚を売る」ことなんですよね。
自分の魂を何分何厘か売って、代わりに「怒らないでいてもらう」っていう弱者の処世術です。
(怒られたり敵意や悪意を向けられたり意見を押し付けられたりすると、トラウマのフラッシュバック的なクソデカパニックを起こす体質なので、そういう状況を回避するの最優先に動いてます……それ辞めたい……)
わたしは自分のことをとても弱いと思っています。
色んな刺激に弱くてストレス耐性が全然ないし、すぐに倒れるし、腕力もないし、泣き虫だし、(特にお金的な意味で)まだ自分一人じゃ生きられないし、優しすぎて人を傷つけることもできない。できるのは恨むことと呪うことだけ。
そんな弱い人間だと思っています……っていうか、まあ、弱いのは事実です。
一般的に「強さ」とされているものをわたしは全然持っていません。
鈍感さも、忍耐も、体力も、腕力も、財力も、権力も、社会的信用も。
だから強さに憧れて手を伸ばし、強者に媚びを売るんです。
食べられるのは嫌ですから。
怒られた時のパニックって、怖い……つまり不安に近い気持ちとかではなく、死そのものみたいな感じなんですよ、思考が止まるし、怪物にバリバリ食べられて「早く……早く終わってくれ」みたいな感じになっちゃうので、恐いまま進むとかそういう話じゃないんです、あれは。
そうしなきゃ生きていけないと思ってたんです。
……でも、もしかして、強くならなくてもいいのかもしれないな?
弱くても、強者に従わなくていいのかもしれないな?
ってことにも、徐々に気づき始めてはいたんです。
怒られても、思う存分パニックを起こせばいいのかもしれないな?
実験しなくちゃ何事も分からないのは間違いなくて、今まで何としてでも避けていたものにこそ、今度は触れてみるべきなのかもしれません。
そしたら、意外に世界は広いこととか、優しいこととかが分かるかも。
媚を売らない、先回りをしないって、つまり、
「怒られないために、気分じゃないのに意に染まないことをしない」に尽きるかな、っていうのがここで思いついた結論です。
そのためには「わたしの意に染まないこと / 染むこととは何か?」ということをひとつひとつ捉える訓練をしなきゃですね。
あともうひとつ付け加えるなら、「今日のことは今日のこと、過去や未来とは関係ない、影響ない、ただ過ぎていくだけの今のこと」を信じられるようになりたいですね……
……わたしが媚を売らなくなったら、とんでもないことになるって知ってるんですよ。
少なくともわたしはそう思ってるっていうか……確信してるっていうか、そう感じてるんですよ。
だから「それだけはいけない」って、今も強く思っていて、恐いです(これは正常な怖さなやつです)。
でも同時に、とんでもないこと起こしたら、それって悪い方向にはもちろんだけど、いい方向にもとんでもないことが起きるかもしれないんですよ。
思い切り自分の世界が拡大するとか、つまりいわゆる「成功」とか「真価を発揮」みたいな。
……だから、ボス戦ならやっぱここを克服しなきゃならないんだろうなぁ~!